静かな躍動感


今日、ノルウェー時代の友人と一緒に行ったEspen Berg Trioのコンサートのことを書きたいなと思い、

突然だけれど、久々にエッセイを。

 

前回のエッセイを書いてから、早2年ほどが過ぎて。

 

Espen Berg Trio

 

夕暮れ時は、空はきれいなのに、通りは紙袋を両手にたくさん持った買い物客でごった返している。

すれ違う時にぶつからないように歩くのが精一杯。

東京の雑踏のなかを、コンサート会場へと急ぐ。

 

そんなふうに会場までやって来たということも、コンサートが始まると、まるでだんだん浄化されるかのようにして、いつのまにか消え去っていた。

 

どうしたら、こんなに音が透き通っているんだろう。

水の波紋のようなものが見える。

そして、ふぅっと空気がひんやりする。

温度、そして湿度が変わる。そんな気がする。きっと。

 

空気がカラッと爽やかになって、やがて雨の匂いがして、気がつくと季節が移り変わってゆっくりと雪が降り始めている。

そんな演奏だった。

 

今日のコンサートをとおして驚いたのは、Espen Berg Trioの3人が放つ音の一つひとつの精度。

音の精度が本当に高い、そのことに心から感動したひとときでした。

 

  

実は普段コンサートに行って、ちょっと激しい曲が続くと、だんだん聴いていると疲れてきてしまうなんてこともあったり(すみません...)。しかし今日は、そういうことが不思議なことに全くなく、ただひたすらに心地よく。

 

その秘密は、この音の「精度」そして「純度」に隠されていたのかと。なるほど。

 

かといって、「あぁ、きれいだな メロディアスで聴きやすいな〜」というさらっとした軽さで終わるのではなく、しっかりガシッと掴まれる圧倒的な要素もある。

透明感があるのに、芯が強くて。

立体的に感じられる音によって、しっとりとした曲にも静かな躍動感が在る。

 

みずみずしい美しさのなかにも強さが見える、そんなことを体感したコンサート。

嬉しい驚きでありました。

 

 

どの曲もそれぞれ、身体と心にすぅっと染み込んでいくような心地よさでとても印象深かったけれど、

前半最後に演奏された「XⅢ」が、特にお気に入り。

 

ロフォーテン諸島の澄んだ空気と、澄んだ音。
やさしく風が吹いて、心穏やかに。